ゴーヤが往く

慶次×小十郎



「突然で悪いが、これを作ってくれ!!」

 突然、奥州にて日々趣味の野菜作りに精を出している片倉小十郎を訪ねて来た、前田慶次は、前置きもなく一本の珍しい野菜を出して言った。


「なんだ、これ?」
 初めて見る、その野菜に小十郎は興味深々。
 食いつきの良さに、慶次が内心『しめた!』と、思ったことなど、小十郎は疑いもしない。
「これは南国の野菜で、『ゴーヤ』またの名を『にが瓜』とも言う。これを栽培出来ないだろうか?」
 南国の野菜――狭い日本。
 それでも、小十郎の熟知していない野菜がある。
 その基となるモノを持参してくれた慶次に、敬意を眼差しを送り――
「ぜひ、やらせてくれ」
 即答で引き受けたのは一年前。
 やっと実った、ゴーヤの実を眺め、小十郎は格別な思いでその達成感に浸っていた。

 収穫時期を予め、慶次に文にて知らせてある。
 あちらを出る時、おおよその到着日を文にて知らせてくれた。
 そろそろ、慶次の姿が坂道を駆け登ってくるはず。
 その方向を眺め、小十郎は心なしか心躍らせていた。


 ◇◇◇

「いや、助かったよ。利(とし)がさ、珍味に目覚めちゃって。でも、南国にはなかなか行けないだろう……本当に助かった」
 背負って持ち帰る分をせっせと荷に詰め込みながら、慶次が言う。
 南国、行けないこともないのだが、あそこには怪しい宗教集団がいる。
 噂では、毛利元就や島津義弘もその毒牙に感化されてしまったとか。
 怖い場所だ――

 そんな怖い場所で栽培され生まれたゴーヤは、これまたとても歪な形をしていた。
 糸瓜(へちま)の縮小版みたいな形をしているが、その皮となるものはイボイボの凸凹なのだ。
 その凸凹(でこぼこ)の凹凸(おうとつ)が、少し見た目を損しているように小十郎は育てながら感じていた。
「どう料理するのだ?」
 実は大収穫になり、慶次ひとりでは持ち帰ることができない。
 せっかくなのだから、伊達家で振舞っては……との意見に、小十郎も少し乗り気、調理方法を聞きだしながらの収穫となっていた。
「皮はそのまま、中の種を取り除いて、輪切り? 確か、下茹ですると苦味が減るとか、まつ姉ちゃん言っていたような。また来るからさ、調理方法書いてもらってくる」
「そうしてくれると、助かる。では、口にするのは、まだ先になりそうだな」
「なんだ、そんなに早く口にしたかったなら、言ってくれよ。別の食べ方が、ある。きっと、小十郎も気に入る」

 こうして、意味もわからず小十郎は慶次に腕を引っ張られ、茂みの中へ――
 慶次の手には、それなりに大きく育ったゴーヤが一本。


 ◇◇◇

「どう? イボイボ感がとても違った刺激になっていない? こういうことされたくて、こんな太いゴーヤ、育てたんだろ、小十郎……」
 ただ単に、日照りがよく、土が適してだけのことなのだが、慶次からしてみたら、違った意味で頑張ってくれたのだと、解釈も出来てしまう。
 上手く小十郎の下半身だけをひん剥き、常備しているのか粘りのある液体を秘所の中に塗り込む。
 じわりとしっとり感が出た頃、手にしていたゴーヤを突き刺したのだった。

 今日会う、それは久しぶりにそれなりの行為があるだろうと、期待はしていた。
 城に寄らず、どこかの宿屋で、もしかしたら野外で――いろいろ想定も考え、これから畑仕事だというのに、昼間から念入りに風呂に入ってきた。
 茂みに連れ込まれ、下だけ脱がされ――次に来るのは慶次の熱いモノだとばかり思っていただけに、衝撃は激しい。

「てめぇ、野菜を粗末にしてんじゃねぇ……とは言え、すげぇ……」
 素直にそう口にした。
 こんな快感は滅多に味わえない。
 細かな凹凸が、ありえない刺激をくれる。
「ンッ……慶次――もっと……」
「もっと、奥? 相変わらず欲深いね、小十郎」
「はっ、あぁ……んっ、ンッンンン……」
 奥に刺し込み、その奥の方だけで抜き差しする。
 悶えるように身体が震えて喜ぶ小十郎。
「乱れている小十郎を、こうやって客観的に見るのも、いいね」
 脚、もっと開いて――慶次の要求に素直に開く。
 四つん這い、背後にいる慶次の様子はわからないが、耳元に触れる息が荒い。
 興奮してくれている――それだけで、小十郎の身体は高ぶっていく。

「凄いよ、小十郎。ゴーヤは小十郎の出した汁まみれだ。握っている手が滑る」
「なら、おまえのをくれ。慶次が欲しい」
 
 ゴーヤと入れ替わり、慶次のモノが入っていく。
 太さは劣り、イボイボもない。
 だけど熱く勃起した慶次のモノは、小十郎の中で更に進化していく。
 小十郎の身体の中を埋めつくように――
 擦れあう度に感じる、筋張った感覚、脈打つ感覚はゴーヤでは味わえない。
「あっんっ、はっ……くっんっ、ンッンンン――!」
「ああ、そんなに大きな声で。まだ昼間、人が通るんじゃないの?」
「ここは、俺しか来ない。滅多に、人は……」
「だけど、来ることもあるんだろう? 声、抑えて――」
「無理……慶次のが気持ち良過ぎる」
「嬉しいね。そう言ってくれて……じゃ、これでも咥えている?」
 
 さっきまで自分の体内に入り、弄繰り回してくれたゴーヤが、今度は小十郎の口を塞ぐ。
「どう? 自分の味――」
 慶次の問いに、小十郎は首を左右に振る。
「やはり、苦い? それとも、生臭いのかな? だけど、俺は好きだよ――小十郎の一部だから」
 これで気兼ねなく付きあげられる――そう素直に思った慶次は、直ぐに激しい突き上げを小十郎に与えはじめる。
 すると、身体全体を痙攣させ、喜び腰を振る。
 口から落ちそうになるゴーヤを必死に手で押さえ込み、あふれ出そうになる声を塞ぐ。
 そのいじらしさが、また慶次の性欲を掻き立てる。

「ふっ、んっ……んっ、ンッンンン……!!」

 慶次が達するより、少しだけ早く、小十郎が解き放つ。
 果てた身体、その中を数回抜き差しして、慶次が小十郎の中で果てた。


 ◇◇◇

「そのゴーヤ……」
 小十郎を犯したゴーヤは、慶次の手に。
「記念に俺が持っていく。小十郎の匂いがする」
「やめろ、変態にしか見えん」
「気にしない。俺がいなくて寂しい時は、ゴーヤ見て、ゴーヤ差し込んで凌いでくれ」
 じゃ!!

 慶次は坂を下っていった。
 何度か振り返り手を振る、その手にはゴーヤがしっかり握られている。

 そして小十郎は、まだ残っているゴーヤの中から数本を手にして、城へと戻って行った。


 完結

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