待つ間が花

慶次×小十郎


「馬鹿か、おまえ……」

 人を散々待たせた挙句、開口一番がこの台詞。
 しかし前田慶次は爽やかな笑みを片倉小十郎に向けた。

 それに対し小十郎は、とうとう気がふれたか……と、返す。
 それにはさすがの慶次も――
「そういう口をきくんだ。だったらこっちにも考えがある――」
 小十郎の腕を掴み茂みの中へ。
 ここは旅人が行き交う道の分かれ目。
 片方に進めば町が、もう片方に進めば山の中へ。
 慶次は山に向かう道からまた逸れた茂みの中へと、小十郎を連れ込んだのだった。


 ◆◇◆

「待たされている間の楽しみって、なんだかわかるか?」
 かなり深いところまで進むと、慶次は立ち止まり小十郎に問う。
「さあな。第一、俺は行くとは言っていない。勝手に待ったのは、おまえの意志だ」
「そりゃそうだ。だが、あんたは来てくれた。俺が待っていると思ったんだろう?」
「そのまま餓死でもされちゃ、目覚め悪いと思っただけだ」
「可愛くない言い方だ。ま、だからこそ楽しいンだけど」
「なんだ、そりゃ……」
 話の論点がズレていくが、慶次は小十郎とのこういう掛け合いが楽しくて大好きだった。
「話戻すと、だな。遅れて来て、どんな顔をしてやってくるだうとか、どんな言い訳してくれるのだろうとか、とにかく妄想が尽きない。待たされて腹立つと言えばそうなんだが、やっぱり無事な姿見れた安心したって方が強い。それで、だ。俺は今回思ったわけだ。きっと小十郎なら開口一番から小言だろうって。嬉しいね。それって、俺を心配してくれているってことだ」
「都合良く履き違えるな」
「いいじゃん。過程より、結果が大事。俺さ、ずっと考えていた。小十郎が来てくれたら、どんなことをしようかって」
「どんな、こと? まさか、おまえ……」
「そ、そのまさか。いろいろと予定だたけど、時間ないことだし、いきなり大勝負っていうのも、悪くはないだろう?」
「ここで? 馬鹿やろう。外でやるなんざ、獣と同じだ」
「いいじゃん、獣。性欲に駆られている俺たちには似合いだと思わないか?」
 とはいえ、はっきりと強く拒めないあたり、小十郎もそれなりに何かを期待しているのは明らか。
 慶次は自分に都合よく解釈し、早技で小十郎を押し倒し、すかさずナニを突っ込んだのだった。

「くっ……」
 突然の違和感と苦痛に、小十郎の口から呻き声が出る。
「違うだろう? あんたが出す声は、そっちじゃない」
 更に深く貫くと、身体をそって逃れようと小十郎の身体が引く。
 そんな小十郎の身体、股間中央で萎え気味のモノを手で包み、軽く擦ると、艶やかな吐息へと変わる。
「そう、その声が聞きたい。気持ちよく、してやるから」
 慶次は手で握った小十郎のナニを優しく刺激し、貫いた自分のナニで激しく突き上げる。
 痛みと快楽が交互に小十郎を襲い、苦痛が快楽に変わるまでそう時間はかからなかった。

「んっ、はぁ……」
「野外はイヤだとか言っていて、結構感じているだろう、小十郎。見られるかもしれない緊張感が堪らない刺激になっているんじゃないか?」
 普段、恋を甘く囁く慶次の口から出ている言葉とは思えない。
 だが、返ってそれが新鮮で小十郎の快楽を大きく刺激していた。
 小十郎の手は慶次の首に絡み、慶次の手は腰をしっかりと支え何度も深く貫く。
 次第に手で握っている方が疎かになっていくと、その手の上に小十郎の手が重なって来た。
「やめるな、よ……慶次。てめぇだけ、気持ちよくなってンじゃねぇ」
「なにを今更。突っ込まれて貫かれて感じている奴が、それ以上の快楽求めるな。だったら、自分でしてみろよ」
「言われるまでも、ねぇ」
 慶次の手と小十郎の手が入れ替わる。
 慶次に絡んでいた腕が一本になると、少し安定感が悪い。
 身体がガクガクと激しく揺れ、手で擦っている筈なのに思うように感じられない。
 ただ握っているだけの状態でも、握っていないよりは気持ちいい。
 小十郎は握ることに意識を変え、ギュッと力を入れて握ってしまった。
「くっ……あぁ……」
 手に感じる生暖かい感触。
 ナニの上から白い液体が止め処なく溢れだす。
「おいおい、勝手に昇天するなよ……」
「冗談、まだ……だが、そろそろ」
 半分射精してしまっている状態でも、気持ちがまだ満たされていない。
 だけど、堪えていられるのもそう時間は保てない。
 小十郎は慶次に激しい突き上げを要求する。

 それは、慶次が小十郎を待っている間。ずっと悶々と描いていた光景。

「いいねぇ、小十郎。俺はおまえのそれを待っていた」
 これ以上奥へは入れない、奥の壁に当たる勢いで慶次が下から上へと突き上げると、小十郎の身体はそれに応えるように艶やかな顔を見せる。
 緑色の茂みの中、白い斑点が飛び散る。
 辺りは静まり返り、ただ男二人の満たされた吐息だけが、熱っぽく残っていた。


 ◆◇完結◇◆

-Powered by HTML DWARF-