夜露

政宗×小十郎


「夜風に触れては、お風邪を召されます、政宗様」
 少し長めの戦を、勝利という形でなし終え帰途についた晩、ゆっくりと湯につかり、戦の疲れを流し、見上げた月夜に人としての和みを感じていた政宗に、それが当然あるべき状態のように小十郎が寄り添ってきた。
「そういいながら手ぶらじゃねぇか、小十郎」
「当たり前です。羽織り物をお持ちしては、政宗様の思うツボでございますから。ですから、せめて部屋の中へお入りください。室内からでも月は見られます」
 肩を抱き、そのまま誘導しようとした。
 しかし、それに流され政宗ではなかった。
「だったら、お前が俺を風邪引かねぇように、暖めろよ―――小十郎」
 肩にかかった手首を握り、握る手に力を入れ思いっきり引っ張る。
 重心が前に方向くと、胸元が政宗の肩にあたる。
 慌てて重心を足下に戻そうとしたが、湯上りの小十郎の足裏は暖かい湯の名残で、少しばかり潤いが残っている。
 それが災いして、思うようにふんばれない。
 その一瞬の隙に、小十郎の身体は宙に浮き、半回転しながら政宗の手中に納まる。
 位置が全く逆転してしまった。
 背後から抱きしめられ、耳元で囁かれる。
「暖めてくれるんだろう、小十郎」
 耳たぶを軽く噛まれ、身体に小さな痙攣が走る。
 感じているのだと、自覚するのには、充分な状態だった。
「はめましたね、政宗様」
「さぁ、どうだろうな。ただ、月は人を惑わすという。月のせいじゃないか」
「お戯れを・・・・・・。ココをこんなにして、今さっき変貌した訳ではないのは、みえみえです」
「だったら? だったらどうだって言うんだ? 結局同じ事だろ? 小十郎が俺を満たしてくれるってな」


「うっ・・・・・・んっ」
 着物の裾を捲くれば、互いに何もつけておらず、こうなることは必然であったと言っているようなものだった。
 しかし、既に高ぶっている政宗のモノを入れるには、まだ小十郎の準備が整っておらず、スムーズに入っていかない。
 無理に収めようと、腰を強引に落とすのだが―――
「ばっ・・・か、小十郎。俺のをへし折るつもりか?」
「す、すいません政宗様。その、中々思うように」
「って、よう―――多少は準備してくるもんじゃねぇか?」
「はぁ・・・・・・」
 しょんぼりとする小十郎の秘所内は更に収縮する。
 折られるというより、千切れそうな締め付けだ。
「くっ・・・・・・」
 耐え切れず、政宗の口から苦痛の吐息が漏れる。
「ま、政宗様・・・・・・?」
「ばか、力んでんじゃねぇ。千切れちまう」
 その気を戻させるしかない状態にまで小十郎は追い込まれ、政宗は大きな溜息をつく。
「まだ早かったか」
 小十郎はどんな時でも必要以上に尽くす。
 尽くすのだが、自ら悦を求めて奉仕するということに欠けていた。
 政宗は手の中に小十郎の半ば萎え始めていたモノを包み、数回擦る。
「んっ・・・・・・政宗様、そのようなこと、小十郎には勿体のうございます」
「そう思うなら、自分でしごいて穴広げろ」
 だが、小十郎の手が自らのモノを弄ることはなかった。
「ふっんっ、あぁ・・・・・・」
 モノが硬く勃起し始めると、穴は自然と広がりはじめ、既に入りかけていた政宗のモノは、小十郎の胎内深くにまで突き刺さる。
「やっと、入ったぜ、小十郎。こっからが本番だ。少しでも悪いって思ってんなら、腰振って善がれよ・・・・・・」
 従わずにはいられないものを、言葉から感じ取る。
 不十分の胎内は、少しでも腰が動けば、内壁がひっぱられ痛みが加わる。
 それでもゆっくりと確実に上下に腰を動かす。
 政宗の言葉ではないが、月を見上げれば、月光に魅入られ変貌したような気になってくる。
「んっんっ、くっあぁ・・・、いいですか、いいですか、政宗様」
「悪くはねぇ。けど、もうぐっしょりとしていた方が、一層いやらしくて俺の好みだ」
 愛汁を垂れ流せるよう、一心不乱に腰を振る。
 そのリズムのタイミングを外して、政宗の下からの突き上げが、小十郎を貫く。
 それが堪らなく、気持ち善い。

「いいねぇ。聞こえるだろ、中で汁がアレと絡み合う音が」
 くちゅくちゅと耳に入る音に、自分今の姿を重ねる。
 堪らなくいやらしい――
「いいんじゃねぇ。最高だぜ小十郎」
 夜の闇に光る糸を引きながら、露が一滴ニ滴と滴る。
 小十郎を抱え込んでいる、政宗の膝の上に、小さな水溜りを作るかのように。
「やっぱ、月の力は偉大だぜ。小十郎をここまで乱れさせちまうなんてな。お前もそう思うだろ、小十郎?」
 しかし、彼の耳に政宗の言葉は届かない。
 しっかりと政宗のモノをくわえ込んだまま、果てていたのだ。
 それでも滴る露が切れることはない。
 止め処なく溢れ、まだいけると見せつけていた。





-Powered by HTML DWARF-