逃れついた場所

政宗×小十郎



 暑い暑い真夏。
 それでも忍耐で乗り切れと、だらけ始めた家臣にはっぱかけた張本人が、逃亡した。



「政宗様、せめてこの小十郎には、一筆書いてから去って頂きたいものですな」
 逃亡者の行き先に心当たりがあった小十郎は、早朝誰にも告げずに馬を走らせた。
 向かった先は、城より少し離れたし基地内にある、物置小屋。
 木々が茂り、日陰か多く、ちょうどいい簡単避暑地代わりにもなっていた。
「どうして、ここだって?」
「子供の頃、よくお勉強を放り出し、成実様と逃げ込んでいらっしゃったので、凄くいやな思い出として、残っております」
 顔をしかめ、淡々と言っている小十郎がおかしくて、政宗は耐え切れず吹き出した。
「ぷっ……そういや、そうだったな。いろんな手段使って、おまえを阻止してたっけ」
「はい。まさか肥溜めまで用いて、落とし穴を作っていようとは」
「ありゃ傑作だったな」
「笑い事ではございません。何日、あの匂いに悩まされたことか……」
「けど、俺は小十郎はこんな落とし穴に引っかからないって、言ったんだぜ? だけど成実は大丈夫だと、言い張った。おまえが引っかかったおかげで、俺は賭けに負け、馬役をやる羽目になった」
「――そう、でしたな。成実様は、ここぞとばかりに政宗様のお尻を叩いて……」
「ああ、おかげでケツが痛ぇのなんの――」
 穏やかな昔話に華が咲いた頃、小十郎はハッと我に返る。

「そうではなくてですね、政宗様。昔話をしにきたわけではございません。さっ、他の者に見つかる前に、戻りましょう」
「戻らねぇぞ、俺は」
「はい? ご冗談を……」
「一日くらい、夏休みくれてもいいだろう?」
「それこそ、冗談ではございません。戦にばかり夢中になられていたツケがまだ終わっておりません」
「じゃあさ、重要なのと、あとでいいのと、分けてくれよ」
「そういうものでは、ないでしょう? ったく、小十郎は、そのようにお育てした覚えはございませんぞ?」
「だな。どっちかっていう、こっちの方か? 念入りに育ててくれたのは」
 小十郎の腕を引っ張り、草むらに倒す。
 起き上がれないよう、自分の体重で押し付ける。
「政宗様?」
「暑いけどよ。こっちも暑いよな、そうだろ小十郎」
 着物の合わせ目から手を忍ばせ、小十郎のモノを握る。
 難しい顔をしていた小十郎の顔が緩み崩れだした。

 政宗に触れられた箇所が熱い。
「小十郎、俺のも……」
 政宗に握られた手が、彼の股の間に忍び込み、そのまま目的のモノを握る。
「んっ……」
 政宗のとろけるような吐息が、すがすがしい筈の朝を濁らせていく。
「ったく、しらけるぜ。俺ばかりかよ、感じているのは」
「そんなことは、ありません……政宗様。この小十郎も――」
「ああ、そんなの知っているぜ。手の中では納まらないくらい、デカク硬くなっていっている。けどな、小十郎。そんな済ました顔されちゃ、一人相撲みたいじゃないか。やっぱ、小十郎は、こっちの方が好きなんだな」
 ほぼ自己完結したような言い方で、一旦彼の身体から離れる。
 着物の裾を大胆に捲くり、腰を持ち上げ、既に小十郎にしてもらわなくても充分役立つほどにまで成長した、あのモノを大胆に挿入をしていった。

「くっ、あぁ……」
 意識はしていても、やはり最初の挿入時の感覚は例えようのないもの。
 自然に、感じたままの歓喜が喘ぎとなってこぼれていく。
「やはり、いい声だすぜ。この挿入の時の小十郎は――」
 更に奥まで入れた後、最初は奥の方だけを突くように、小十郎がせがむように腰を動かし始めたら、ゆっくりと浅く深くを繰り返し、内膜への擦りつけも忘れずに付け加える。
「あっ、んっ……」
 朝、野外でするような行為ではない。
 気づいても、もう遅い。
 口を手で塞いでも、くぐもった吐息と喘ぎは消せやしない。
 それでも意識しながら脚を広げ、中を絞めたり緩めたりして、政宗に奉仕している自分がいることを、小十郎にはもうどうにも出来なかった。
 日に日に場所も時間も考えずに貪る政宗を止められない。
 止められないのは、自分の欲のようにも思えてくる。
「んっ、あぁ……あっんっ、政宗様――」
「小十郎――」
 息が合い、そのまま果てたふたりだった。


「仕方がありませんな、政宗様。この小十郎も一緒に怒られますので、そろそろ戻りませんか?」
 そうやって、再び説得をした頃には、すっかり夕暮れ間近となっていた。


―完―

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