比翼連理

利家×小十郎


 梅雨間近。
 南の方では日々雨の日が続くのだという愚痴にも似た文が小十郎の元へと届いた。
 差出人は、前田慶次。
 花の都と言われている京も鬱陶しい梅雨に見舞われたので、暫く実家に戻るという内容が文の最後に認められていた。
 落ち合う場所を、その実家にして欲しいという追伸付きで。
 小十郎にしてみれば、京へ行くより前田慶次の実家、前田利家の家に行く方が近くて便利。
 ただ懸念するとすれば、前田家当主前田利家は織田信長の家臣であるということ。
 いつ何時襲われるかわかったものじゃない。
 しかし――
「折角の誘い故、応じてみようと思う」
 そう政宗に暫しの休暇を貰い、向かったのだった。

 それがまさか――
 あんなことになるなんて――


 ◇◇◇

 人目を気にせず夫婦愛を見せ付ける、利家とまつ。
 このふたりの仲は敵味方関係なく知れ渡っていることで、小十郎も何度と無く見かけてはいたし、慶次からそれとなく話も聞いていた。
 最初は、ああ……これが噂の――などと他人事のようにしていられたのだが……
 その日の晩のこと。
 まつの手料理に舌鼓。
 酌をしてもらい、気分は上場。
 そんなに飲んだつもりもないし、弱いわけでもない小十郎だが、本人の思いとは裏腹に激しい酔いに見舞われ、気付くと布団の上に寝かされていたのだった。
 隣の部屋から怪しい声。
 頭から真水を被って酔いを醒ましたい心境だが、近くにあるのはたらいに汲まれた、水のみ。
 とても飲み水とは思えない。
 荒々しく顔を洗い、幾分か意識がはっきりとした小十郎は、身構えつつその声のする方へと歩み寄った。
 襖を開け、こっそりと中を覗くと――
 そこでは、目を覆うような光景が繰り広げられていたのだった。


「よお、気分はどう?」
 背後から声をかけられ、飛び上がる程驚いた小十郎に対し、慶次は淡々としている。
「ああ、見ちゃったンだ。見ちゃったなら、俺らも仲間だな」
 襖を豪快に開け、堂々とした態度で中へと入っていく。
 そして振り向くと、手招きで小十郎を呼び込んだ。
「おお、目覚めたか。久しい客人だったから、な。まつも加減が出来なかったらしい。詫びと言ってはなんだが、こっちの方ではしっかりと接待させてくれ」
 利家の身体に跨り揺れ動いていたまつが、艶かしい視線で小十郎を舐めるように見る。
「……まつ、殿?」
 その視線はまともではない。
 小十郎がたじろぎ、一歩後退すると、縋るようにまつの手が小十郎の足元に絡みついた。
「なんだ、まつ。小十郎殿としたいのか?」
「まつ姉ちゃん。それはダメ。小十郎は俺のモノ」
 足元に絡みついた手を解き、ふたりの間に慶次が身体を張って割り込む。
「んん? 慶次とそういう仲なのか? それは残念。だが、妻の失態、その後始末は夫がするもの。今宵は俺に貸してくれ……慶次」
 会話は当人である小十郎を無視して進められていく。

「ちょ、ちょっと待て! 何を言っている?」
「何って、今見たこと、そのまま?」
「慶次……そこで、なぜ疑問系になる?」
「細かい事、気にしていると老けるよ、小十郎。利に可愛がってもらいな。見たまんま、すっげぇ激しいから……まつ姉ちゃんが強くなったのも、利の激しさに耐える身体作りが最初だったんだ。それが今じゃ、一緒に戦場駆け巡るンだから……愛って凄いよな。そう思うだろ、小十郎も……」
 慶次が自分の発言に惚れ惚れしていても、小十郎には何も答えることが出来なかった。
 足元に再び絡みつくまつの腕。
 上半身を慶次に押さえつけられ、身動き出来ない小十郎に野生児そのものの利家が近づく。
 舌舐めずりして、近寄った利家が最初にしたのは、はだけた着物を荒々しく引き千切り、露出された股間のモノにしゃぶり付く。
 そのまま食い千切られると思った小十郎は、はしたなくそのまま失禁してしまったのだった……
「しょんべんかける趣味はあっても、かけられる趣味はない」
 腕で顔を拭った利家は、立ち上がると同時に小十郎の髪の毛を引っ張り畳の上に身体を平伏させる。
 続いて頭だけを持ち上げ、まつの身体の中で勃起していたモノを口の中へと押し込む。
「歯を立てずに抜いてくれ」
 小十郎に逆らう術はない。
 言われるまま、咥えたモノに舌を絡め吸い上げる。
 利家の顔が快楽に歪むのを確かめると、自分で知っている限りの奉仕をした。

 既に半分ほどイキかけていた利家のモノは、程なくして小十郎の口内で達する。
 精液と、そして排尿を口内の中で済ませると、吐き出させないよう口と鼻を覆って無理やり飲み込ませた。
 飲むのも苦痛、飲み終わっても苦痛。
 小十郎は解放されても咳き込み苦痛しか残らなかった。


 どれくらいの時間が経過しただろうか。
 小十郎は苦痛から解放され、今では快楽の中心に浸っている。
 下の口で利家のモノを受け入れ、自ら身体を上下に動かし快楽を貪り、小十郎のモノは利家の手の中で何度となく果てていた。
 時折、慶次とまつに身体を弄られ、悶えながらも快感と口から漏れだす。

 まさか――
 夫婦の営みを覗き見てしまったが為に、このような状態に陥ってしまうとは――

 いや――
 それ以前に……
 なぜ前田家への招きに応じてしまったのか……

 政宗様にどのように報告するべきか……
 考えたところで考えが纏まるはずもなく――

 仕方がないと諦めてしまえば、いっそうこの者等にいいように扱われていくのだと、後悔してもしきれない片倉小十郎が居た。


 完結

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