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● Lightning --- 元親×小十郎 ●



 目の前にある、しまりのあるケツを手で擦る。
 濡れた衣服を着ていたせいで、温もりよりも冷たさが先に伝わってきたが、元親の手の温もりを吸収し、次第に触れた先から体温が上がっていっているようだ。
 筋肉質とまではいかないが、女身体と比べると、弾力も肌の滑りも劣るというもの。
 それでも、お尻の筋肉は他と比べると少ないらしく、触り心地がいいとすら感じる。
 そのまま指先は、隠された穴を探りに、お尻の割れ目を執拗に探り出す。
「くっ……」
 屈辱と羞恥が混ざった吐息が、小十郎の唇からこぼれだした。
「ここまで俺に従順になれるんだ、身体も素直に開放したらどうだ? 自ら脚開いて、俺を誘うとか――」
「それ以上、俺を愚弄してみろ。二度と喋れないように、舌を噛み砕いてやる」
「ふん、俺の舌を噛み切る――ねぇ。それって、接吻してくれるって、言うのか? それとも、接吻してくれって、強請っているのか?」
「ちっ――どこまで、都合よく解釈できる脳みそをもっていやがるんだ、てめぇ」
「てめぇ――ねぇ。いいのか? 俺にそんな態度とって。このまま航路を戻したっていい。それは、これからのおまえの態度次第だ」
 振り向いていた小十郎の髪の毛を掴み、そのまま頭を床に押し付ける。
 そのまま頭は床につけておけと、言葉を付け加えられる。
 体勢は、いっそうケツを高くあげるカタチとなる。
 まるで、そこから先を強請っているかのように――
「結構イヤラシイ事するのが、好きなんだな、おまえ。もしかして、伊達軍総勢で可愛がられているとか?」
 ニヤリと元親の口元が、欲深く笑う。
 小十郎に、その元親の表情は見えないが、視線の端にひっかかるようにして、己の無防備な下半身が見え隠れしていた。
 そのあまりにも無様な姿に、情けなく、泣きたくなる思いであった。
 しかし、そこで泣けば相手の思うツボでもある。
 強請って、腰振っても同じである。
 嫌だと拒んでも、またそれは相手を増徴させるだけのこと。
 ここは黙って耐えるしかなかった。

 元親の指が、探し当てた穴の中へ、容赦なく忍び込んでいく。
 1本程度ならば、一瞬の違和感。
 しかし、それが続けて2本も忍ばせられては、身体がついていかない。
「くっ……、いっ――!」
 入り込んだ指が、体内で抉るように動き回る。
 これには、さすがの小十郎も、閉ざしていた口元から、耐え忍ぶ吐息がこぼれ出す。
 ただの違和感ではない。
 違和感と共に、無理に広げられる痛みと、内壁を擦られる熱い感覚。
 三つが重なり合うと、とても不思議な感覚が、彼の身体を犯していった。
「ちっ――もう、いいだろう……その中に何を隠し持てると言う?」
「別に、武器とは限らないだろう? 小瓶に入れた薬物とか……小さいものなら、奥の奥まで入れて持ち込める。指じゃ、奥まで確認できないな――」
「ばかやろう。そんな指で確認できない程奥まで入れて、隠し持ってきたとして、指で届かないんだ、どうやって使う? 冷静に考えろ」
「どうやって? どうやってだろうねぇ……隠し入れた本人なら、その方法も知っているんじゃねぇのか?」
 元親の言葉は、小十郎のもっともな言葉を、片っ端から覆していく。
 言われてみれば、もっともだと思える事も暫し、次第に小十郎の口数は減り、変わりに熱い吐息だけが溢れだしていた。

「そんな吐息ばかり聞かされちゃ、入れてくれって言っているようなものだ――なぁ、小十郎?」
 答えるように、小十郎の口からは熱い吐息がこぼれ出す。
 元親の指が、彼の体内から抜かれ、広がった入り口から、空気が触れる。
 湿った内壁を微かに乾かす程度の空気――
 火照りかけた、身体を冷ますのには、物足りない程度の空気――
 どちらにも傾けず、中途半端な肉体が欲するのは、どちらなのか。
 つき上がっている腰の位置を少しだけ落とした、その時――
 小十郎の身体を駆け抜けたのは、稲光のような衝撃だった。
 身体を裂く、それとも違う――不思議と満たされていく衝撃に、身体はいち早く馴染んでいくが、感情がついていかない。
「いっ……んっ、ンッンンン――!!」
 油断をすけば、叫んでしまいそうな声を押し殺す。
 それでも、微かな隙間から吐息はこぼれ出し、噛み合わないその状況が、いっそうイヤラシクさせる。
「奥まで入ったぜ、小十郎――何か、あたるモノがあるな……何を隠した?」
 問い詰められたところで、隠しているモノなどない小十郎には、知らないとしか答えようがない。
「知らない筈、ねぇだろ?」
 更に奥へと突き刺さる。
 当っているモノを突き破る勢いで――
 しかし、簡単には突き破れそうにない。
 元親は、一旦入れたモノを引き、貫く勢いをつけて、再度奥まで差し込んだ。
「ひっ――いっ、んっ……やっはっ……んっンンン――ッ!!」
 今度は声を押し殺す余裕がなく、感じたままの歓喜をこぼしてしまった。
「なんだ、ただの身体検査で、そんなに感じやがって――本当にイヤラシイ身体をしている」
 元親の腰が前後に動き出し、中に填まっている彼の太い異物が、小十郎の体内を好き勝手に暴れまわり出す。
 感じてなどいない、断じて――
 そう思っているのは、小十郎の理性だけで、身体は次第に火照り、熱を帯び、いっそう熟しきった艶やかな欲を表しだしていた。
「なかなかいい身体をしている。おまえが大人しく、俺に身体を委ねるって言うなら、今後一切、奥州には近寄らないと、制約してやってもいい。こんな極上の宝を手に入れられるなら、安っぽい制約だ」
 それは、伊達との永遠の別れをしろと言われているも同然。
 奥州に手を出そうなどと言う輩が減るのは、喜ばしいことだが、主君との別れは別物である。
「断る――いつでも、挑んで来い」
「へぇ、そりゃこう意味か? 俺の手の内にいるより、強奪されて犯されている方が、好き――別に、俺はそれでもいいぜ? 目指すは、片倉小十郎ただひとり――他に目もくれず、俺はおまえを奪いに奥州へ挑んでやる」


 身体検査と言われて始まったふたりの関係は、梅雨の季節が終わるまで、船上で続けられた。
 人質変換の約束の時、元親は小十郎の耳元で囁いた。

 夏の花が満開になる頃、再び奪いに行く――と。

 下半身に、元親の温もりの余韻を残しながら、小十郎は振り向く事無く、主君の待つ方へと、ただ真っ直ぐに歩んで行った。


★ ★ ★



 夏の日差しを感じる、晴天の昼下がり、元親は予告通りに姿を見せたのは、一方的な宣戦布告をされてから、1ヶ月程しか経っていない。
 
「まだ、俺の味を覚えているか?――片倉小十郎……」



―完―
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